印刷会社の営業代行——既存顧客依存からの新規開拓(業界別)
印刷会社の新規開拓が進みにくいのは、長年の得意先からの継続受注に依存する御用聞き型の営業体質が定着している一方で、紙媒体需要のデジタル化による市場縮小と価格競争が同時に進み、新規開拓の必要性だけが高まっているためです。 既存顧客対応に追われる営業担当がそのまま新規開拓の架電に時間を割くのは現実的に難しく、役割を分担したうえで営業代行を使う設計が現実的な選択肢になります。
この記事では、印刷会社の新規開拓が進みにくい構造を整理し、主要な新規開拓チャネルを比較したうえで、狙うべき開拓先の見極め方、営業代行を機能させる役割分担、向かないケースまで発注者目線で解説します。
比較表:印刷会社の新規開拓チャネル
| チャネル | 性質 | 立ち上げの手間 | 主なリスク・限界 |
|---|---|---|---|
| 既存顧客・取引先からの紹介 | 待ち(紹介者の人脈に依存) | 準備不要だが関係構築に時間がかかる | 紹介件数が既存顧客の数に比例し、拡大の再現性が低い |
| 広告代理店・制作会社の協力会社登録 | 待ち(相手の受注量に依存) | 登録・関係構築に数ヶ月 | 発注の優先順位が低く、安定した受注量にならないことが多い |
| 自社営業担当によるテレアポ内製 | 攻め(自社で対象を選定) | 1〜3ヶ月(リスト・スクリプト整備) | 既存顧客対応と兼務になり、架電時間が確保しにくい |
| 営業代行(成果報酬型) | 攻め(対象条件は自社が設定) | 契約後、比較的早期に着手可能 | 差別化ポイントの共有が甘いと、価格だけで比較され断られるアポが積み上がる |
既存顧客・取引先からの紹介は成約率が高い一方、既存顧客の数そのものが母数の上限になるため拡大の再現性が低いという限界があります。広告代理店・制作会社の協力会社登録は発注元の受注量に依存する「待ち」のチャネルで、優先順位が低いと安定した受注につながりません。自社営業担当によるテレアポ内製は、既存顧客対応という本来業務との兼務になり、架電に充てる時間が細切れになりがちです。
**営業代行(成果報酬型)**は、対象業種・企業規模を自社で条件設定したうえで、継続的にアプローチできるチャネルです。初期費用0円で着手できるため、既存の紹介経路や協力会社関係を維持しながら、新しい接点を並行して増やす使い方が現実的です。
なぜ印刷会社の新規開拓は進みにくいのか——3つの構造要因
印刷会社の新規開拓が他業種に比べて進みにくい要因は、主に3つに整理できます。
①御用聞き型の営業体質が定着している。 印刷業は長年、既存の得意先からの継続発注に支えられてきた業界です。営業担当の主な仕事は「注文を受けて正確に納品する」ことで、ゼロから相手を見つけて提案する新規開拓型の営業経験が社内に乏しいことが少なくありません。
②市場縮小と価格競争が同時に進んでいる。 紙媒体からWeb・デジタルへの需要移行により、既存顧客からの受注量そのものが減少傾向にある企業も多く、同時に印刷物はコモディティ化しやすく値段だけで比較されやすい商材です。新規開拓の必要性が高まっているにもかかわらず、社内にその経験とノウハウが蓄積されていないというねじれが起きています。
③差別化ポイントが伝わりにくい。 小ロット対応・短納期・デジタル印刷(オンデマンド印刷)・環境対応(再生紙・SDGs対応)など、印刷会社ごとに強みは存在するはずですが、電話口で「安さ」以外の価値を端的に伝える訴求が整理されていないまま架電すると、価格だけで比較され断られて終わります。
この3つが重なることで、印刷会社の新規開拓は「架電量を増やせば当たる」という単純な作業にならず、差別化ポイントの言語化と開拓先の見極めが特に重要になります。
新規開拓で狙うべき先の見極め方
営業代行に対象選定を丸投げすると、単純な価格比較で終わる相手にも架電してしまい、断られるだけのアポが積み上がります。発注側で優先順位をつけておきたい対象は次の4つです。
- 広告代理店・制作会社:印刷物の発注元となる協力会社を探している段階の企業は、継続発注につながりやすい対象です
- EC・D2C事業者:同梱物・パッケージ・下げ札など、通販特有の印刷需要を持つ企業は新規の開拓先として伸びている領域です
- 企業の広報・マーケティング部門:会社案内・販促物・ノベルティなど、定期的な発注が見込める部門です
- 自治体・地域の事業者:広報物・案内物など継続的な発注が発生しやすく、地域密着型の印刷会社との相性が良い対象です
これらの条件を代行会社と事前にすり合わせておくことで、「話は聞いてもらえたが価格だけで比較されて終わる」というアポの量産を防ぎやすくなります。
営業代行を機能させる役割分担
印刷会社で営業代行を活かす鍵は、「話を聞く価値がある企業との初回接点づくり」までを代行会社に任せ、具体的な企画提案・見積・価格交渉は自社の営業担当が担うという分業を明確にすることです。
電話口で見積金額や納期をすべて確定させる必要はありません。テレアポに求める役割は、対象業種・発注頻度・想定される印刷需要に照らして「話を聞く価値がある相手かどうか」を見極め、面談につなげることに絞られます。この精度を上げるために、契約前に代行会社と次の点をすり合わせておくことが重要です。
- 対象業種・企業規模:広告代理店、EC・D2C事業者、企業の広報部門、自治体・地域事業者のどれを優先するか
- 自社の差別化ポイント:小ロット対応・短納期・デジタル印刷・環境対応など、価格以外に訴求できる強み
- 対応可能なロット・納期:自社の生産体制に合う発注規模を事前に明確にしておく
- 窓口の設計:広報・マーケ担当、購買担当、代理店の制作担当のどこにつなぐか
このすり合わせが浅いまま架電を始めると、話は聞いてもらえても価格だけで比較され断られるアポばかりが積み上がるという結果になりがちです。発注側が獲得アポの中身を事前に確認し、承認したものだけを課金対象にする承認アポの仕組みは、こうしたミスマッチを構造的に抑える手段として機能します。単価の考え方はアポ単価2万円の内訳もあわせてご覧ください。
既存顧客・紹介に依存した開拓からの脱却という課題は、士業事務所の営業代行で解説した顧問先開拓の構造とも共通しています。また、既存顧客対応に追われて新規開拓の人手が確保できないという事情は、営業の人手不足への対処でも詳しく解説しています。
印刷業界特有の注意点——低単価商材のコスト構造
印刷会社が営業代行を検討する際は、商材特性に起因する注意点があります。印刷物は一件あたりの受注単価が低いことが多く、新規開拓にかかるコスト(アポ単価)と、見込める受注単価・継続発注の可能性を事前に見積もっておく必要があります。単発の小口受注先ばかりが増えると、新規開拓のコストに対して受注額が見合わなくなることがあります。
このため、新規開拓の対象は「継続発注が見込める相手」を優先し、単発受注で終わりやすい相手への架電は絞り込むという判断が実務上重要です。広告代理店・制作会社の協力会社化や、企業の広報部門への定期発注の提案など、継続性のある取引につながりやすい対象を優先することで、新規開拓のコストに対する投資対効果を保ちやすくなります。
印刷会社の営業代行が向かないケース
印刷会社の新規開拓において、営業代行の効果が出にくいケースもあります。正直にお伝えします。
- 自社の差別化ポイントが整理されていない場合:価格以外に訴求できる強みが言語化されていないまま架電しても、価格だけで比較され断られるアポが積み上がるだけになります
- 既存の受注で生産体制がすでに手一杯の場合:新規開拓を進める前に、まず生産体制の見直しや受け入れ余力の確保が必要です
- 単発の小口受注先ばかりを増やしたい場合:新規開拓にかかるコストに対して受注単価が低すぎると、投資対効果が見合わないことがあります
このいずれかに強く当てはまる場合は、営業代行よりも差別化ポイントの整理や生産体制の見直しを先に進めたほうが投資対効果が高いことがあります。
まとめ
- 印刷会社の新規開拓が進みにくいのは、御用聞き型の営業体質が定着している一方、市場縮小と価格競争で新規開拓の必要性だけが高まっているためである
- 既存顧客・取引先からの紹介、協力会社登録、テレアポ内製、営業代行は併用が基本。営業代行は対象条件を自社設定できる「攻め」のチャネルとして機能する
- 狙うべき開拓先は、広告代理店・制作会社、EC・D2C事業者、企業の広報・マーケ部門、自治体・地域事業者である
- 営業代行を機能させる鍵は役割分担。「初回接点づくり」までを任せ、企画提案・見積・価格交渉は自社の営業担当が担う
- 低単価商材であることを踏まえ、新規開拓のコストに対して継続発注が見込める相手を優先する
- 差別化ポイントが整理されていない、生産体制に余力がないといった場合は、営業代行以外を優先したほうがよいこともある
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この記事に関するよくある質問
印刷会社の新規開拓に営業代行は向いていますか?
役割を『話を聞く価値がある企業との初回接点づくり』に限定すれば向いています。見積提示・価格交渉・企画提案は自社の営業担当が担う分業が前提です。印刷物はコモディティ化しやすく価格勝負になりやすい商材なので、デジタル印刷対応や小ロット対応、SDGs対応といった自社の差別化ポイントを代行会社と事前に言語化・共有できるかが成果を左右します。
営業担当が既存の得意先対応で手一杯で、新規開拓の電話営業をする時間がありません。それでも使えますか?
使えます。むしろそれが印刷会社が営業代行を使う主な動機です。御用聞き型の営業スタイルが定着している印刷会社では、既存顧客対応に追われる営業担当が新規開拓の架電に時間を割くのは現実的に難しいことが多いです。初回の面談設定までを代行会社に任せ、面談後の企画提案・見積・価格交渉は自社の営業担当が担うことで、既存業務を圧迫せずに新規開拓を並走させられます。
印刷会社の新規開拓で営業代行会社に確認すべき点は何ですか?
3点あります。①自社の差別化ポイント(対応ロット・納期・デジタル印刷・SDGs対応など)をどこまで具体的に架電先へ伝えられているか、②獲得したアポの中身を契約前に確認できる承認アポの仕組みがあるか、③面談後の企画提案・価格交渉は自社の営業担当が担う前提で役割分担が設計されているかです。差別化ポイントの共有が浅いと、価格だけで比較され断られるアポが積み上がるリスクがあります。